マイホーム探しをしているお客様とのお話で良くご希望条件として出てくるのが資産価値という言葉です。「この物件の資産価値は?」とか「20年後でも資産価値が下がらない物件が欲しい」といった感じです。ユーチューブ等でも「資産価値の高い物件を買いましょう!」的な方が多いのでお客様もその影響を受けているものと思われますが、自分自身や家族が居住するマイホームに資産価値はそんなに大事なのでしょうか?
将来の資産価値は予想でしかない
10年後、20年後の資産価値の高い物件を買えれば良いのは当然ですが、そもそも不動産は相場に左右されます。相場というものは上下するので上がる時もあれば下がる時もあります。最近10年は相場は上昇基調でしたが、それ以前はバブル崩壊以降下降局面が継続しておりました。(私が不動産営業を始めた約20年前は、バブル期に購入したお客様の売却相談の査定をすると、購入時の1/3以下となるのが当たり前でした。)
一度下降したから上昇しているのです。
現在、相場が特に上昇している都心や近郊中核都市の駅近が10年後、20年後もさらに上昇しているかどうか分かりません。30代くらいまでの不動産営業マンや不動産ユーチューバーさんは、不動産相場が上昇基調の時しか不動産業務を経験していない方が多いと思われます。「資産価値が一番大事!」はおそらく本心からおっしゃられているのでしょう。しかし、あくまでも不動産価格は需要と供給のバランスから成り立つ「相場」によりますし、建物は年数経過とともに評価額は下がります。特に相場は加熱した後は落ち着きますので、相場が高い時期に購入した不動産の資産価値は下がるのは普通の事です。20年後も都心居住がステータスとなる世の中である保証もありません。資産価値については確定したものでは無いことを良く理解しておくと良いと思います。
マイホームの購入で確定するもの
将来の資産価値については予測でしかないと申し上げましたが、そもそもマイホームを購入すると確定するものとは何でしょうか?
具体的に挙げますと、間取り、立地、住宅ローンの借入額です。マイホームですのであなたやご家族がそこで暮らす上で、上記の3つは非常に重要です。例えば居住性よりも資産価値を重視して
・将来の資産価値を検討して手狭だけど駅に近いマンションを購入した。
・のどかな郊外の閑静な住宅地が好きだけど駅から遠く資産価値が弱いと言われたので駅近の3階建狭小住宅を購入した。
という場合ですが、そこで立地や間取り、及び住宅ローンの借入額は確定しましたが、将来の資産価値は確定しておりません。もし20年後期待通りの資産価値が将来維持できなかった場合には、その間のご家族との居住価値を我慢した上に、資産価値も満足できなかったこととなります。さらに資産価値を重視して無理をした住宅ローンを組んでいた場合には資金面でも切り詰めた生活をして我慢を強いられていたかもしれません。
将来の資産価値について全く考慮する必要は無いとは言いませんが、確定していないものをマイホーム探しの希望条件の上位にするのは、個人的にはお勧めできません。(マイホームを持った上で、さらに不動産投資としての不動産購入であれば資産価値は大事だと思いますが、混同している方が多いようです)
郊外物件は損をする?
資産価値のお話でよくお客様が心配されるのが、郊外や駅から遠い物件は将来需要が無くなり売れないのではないか?という点です。確かに一般的に駅に近い程需要は高いです。しかし、それは将来だけでなく現在も同様で、現在購入する価格も駅に近い方が相当高額となります。
例えば同じ築年数の中古マンションで片方の物件Aは駅5分で5000万円、もう一方の物件Bは駅徒歩20分で2500万円で購入したとします。20年後、下落率が駅徒歩5分は下落率20%で納まったのに対して駅徒歩20分の物件は50%も下がってしまったとしましょう。そうすると20年後に売れる価格は
A:4000万円
B:1250万円
となってしまいます。
一見するとBは1250万円という安価でしか売却できず大損したようにも見えますが、当初購入金額からの価格変動幅は、
A: 5000万円-4000万円=1000万円
B:2500万円-1250万円=1250万円
となり、金額としては250万円しか差がありません。もちろん駅徒歩5分の物件の方が得だった計算となりますが、住宅購入にかかる仲介手数料や住宅ローンの融資手数料、20年間の利息等まで考えると差はほとんどありません。
当初購入金額がどれだけかかったかを考慮せずに、将来の売却見込価格だけを考えて損得勘定はしないようにしましょう。将来の予測が分からない「資産価値」を過剰に重視せず、あくまでも余裕のある予算の範囲内で自分や家族にとって「居住価値」が高いと思える物件を選ぶべきだと個人的には考えております。
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